停電クラブ

誰も知らない なぞ の劇団。

フィクション

 

 

気づいたら社会人を辞めてました。

 

というか新卒で入った会社を四か月で辞めてしまっていた。

 

正確には、入社三か月で辞表を提出して本社オフィスから姿を消し、最後の一か月は会社が経営している喫茶店で気ままに珈琲を淹れていた。その喫茶店の従業員は全員、当時の弊社の契約社員かアルバイトだったので、僕が唯一の正社員だった。事情は話してなかったので、周りからしたら、何故本社の人間が喫茶店で珈琲を淹れてるのか、嘸かし疑問だったと思う。その道のプロから、ハンドドリップを教えてもらって、豆ごとに違う淹れ方をしたり、結局上手くならなかったけどラテアートをやってみたり。もともと珈琲が好きだったので普通に楽しかったし、周りが珈琲マニアだらけでわけわからん豆の話とかしてて結構面白かった。シェフ志望のめちゃめちゃ料理が上手い二十歳の青年と仲良くなったり(辞める時お菓子をいっぱいくれた)、なんかお洒落なおじさん(結局誰だったかわからないが札幌の喫茶店業界で偉い人らしい)に「お前が将来店をもてるように俺が面倒みてやる」とかようわからんこと言われたり、レキシのおっかけをやってる女性と稲穂の話で盛り上がったり(ライブを観に僕の地元にも行ったと言っていた)、なんかわるくない感じだった。

 

あとアルバイトに東京の田町の出身の人がいて、しかもぼくの高校に部活の練習試合でよく通ってたって言ってて、なんかイッツァスモールワールドでんねんなぁて思ったりもした。ちなみにその人は既に子持ちで、さらに妊婦だった。僕の一個上なのにすごいなあと思った。ライブのカメラマンもやってるって言っててかっこいいなあって普通に思った。演劇やってたって言ったら「続けなよ」って言われた。東京で会おうって言ったけどまだ会ってないな。もう二人のお母さんになってるんだろうな。

 

そんな感じで最後の一か月が一番有意義だったな。よくわかんなかったけど。

その前のオフィスでの三か月は地獄だったなあ。なにが地獄なのかは上手く言えないけど、結局合わなかったってことだろうな。日に日に痩せてしまったし。多分客観的にみたら地獄が聞いてあきれるような普通の職場なのかもしれないけど、嫌だったので逃げました。根性なしなので。

 

それで、会社を辞めて、家を引き払った。

家具やら服やら本やら思い出の品などほとんど売ったり捨てたりあげたりしてしまって、引っ越すときは小さい段ボール5つ(本が二箱、服が二箱、雑貨で一箱)に収まった。まあ実際、捨てすぎだよな。

 

いろいろ捨てたけど、その中でも一番思い出深かったのが、布団を捨てる時で、どうせ捨てるんだからと思って、夜の公園に布団敷いて寝てみたり、布団を巻いて坂から転げ落ちたり、布団で友人と殴り合ったり、あれは渾沌としていて楽しかったな。あとあの時なんでかわかんないけどアブサンを飲みまくってて、アブサンの独特な匂いを思い出す。アブサンを飲むたびにこの夜のことを思い出すんだろうなって思ったりもする。でもこの間酒場でアブサンを頼んだ時、全然まったくこれっぽっちも思い出さなかったけど。そんなもんか。

 

結局、八月に入ってすぐ東京の実家に戻った。

久しぶりの東京の夏は思ってたほど暑くなかった。

なんというか、今まで微塵も思ったことなかったんだけど、東京に実家があるのってめちゃめちゃ恵まれてるんだなって、その時はじめて思った。

 

帰って来たその日に友人と井の頭公園に行った。雨の中アヒルボートに男二人で乗ってずっと鴨に食パンをあげていた。千切ったパンを手にのせてると鴨が食べてくれるのが可愛かった。一生やってられるなって思った。友人に「無職になってすぐ井の頭公園に来る感じセンチに酔いすぎてるな」みたいなことを言われた。それで思い出したんだけど(なぜか本当に忘れていた)、ちょっと前に恋人に愛想をつかされ、そこそこ長く続いた付き合いが終わっていた。で、その交際終了宣言の舞台が井の頭公園だった。

 

その夜吉祥寺の酒場で友人と飲んだ。彼は就活を一瞬で諦めた人間で似たような立場だったし、非常に恥ずかしながら自殺という選択肢にポジティブだった。まあ自意識をこねくり回して互いにいろいろと暗い話をして、結構飲んだはずなんだけど、会計を頼むと不自然に安くて、それで(本当にしょうもないと自分でも思うけど)、とりあえず死なずにいようと思った。

なにかしらがちゃんとしたらまたここに飲みに来ようかな。

 

で、その次の日は甲府にいた。甲府で働いてる友人に会いに二時間半バスに揺られた。

 

ちょっと眠くなってきたので今日はここまでで。

誰の目にも触れないとは思うけど、誰も読みたくない文章を書いてしまった。ごめん。